【パパの悩み日記 vol.32】
「ママ、きょうも笑ってないね」
その一言に、カチリと心の奥が鳴った。
ママは笑っていなかった。
いや、たぶん最近、ずっと笑ってなかった。
でも、それを言葉にしたのは、
僕じゃなくて、2歳の娘だった。
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思い返せば、昨夜も口数が少なかった。
娘をお風呂に入れて、歯を磨いて、寝かしつけて。
そのあとは、スマホを見ながら洗濯物を畳んでいたママの背中を、僕は黙って見ていた。
なにも言えなかった。
「ありがとう」も、「おつかれさま」も、
どこか、言うタイミングを逃してしまっていた。
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ママはいつも通りにふるまっていた。
娘に優しくして、ごはんを用意して、送り迎えをして。
でも、どこか“心が置いてけぼり”になっているように見えた。
無理しているのか、本当に何も感じていないのか、
その境界線が見えなくて、僕は戸惑った。
仕事の疲れを理由に、「察する」ことすら手放していたのかもしれない。

「パパ、きょう、ママにチューしてあげたら?」
唐突に娘がそう言った。
僕が驚いて笑うと、
娘はちょっと得意げな顔で続けた。
「ママ、チューしたら えがおになるでしょ?」
なんてことない一言だったけど、
その無邪気さが、胸に突き刺さった。
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最近、僕たちは“家族”の形ばかりを気にして、
“気持ち”を忘れていたのかもしれない。
「ちゃんと育児してるか」
「仕事も家事も分担できてるか」
「保育園の持ち物、漏れはないか」
そんなチェック項目ばかりを並べて、
大切なことを後回しにしてきた。
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僕が娘を抱きしめているあいだ、
ママは誰に抱きしめられていたんだろう。
ママの声はずっと穏やかで、
怒ったり、大声を出したりすることはなかった。
でも、それが「大丈夫」の証とは限らない。
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夜、娘が眠ったあと、
ママと顔を合わせる時間が減った。
同じ部屋にいても、スマホやテレビの音が、
僕たちの“会話”の代わりになっていた。
「なに見てるの?」も言わない。
「今日どうだった?」も聞かない。
その静けさに慣れてしまっていたのは、僕の方だった。
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それを、何より敏感に感じ取っていたのが、
娘だったんだと思う。
言葉はまだ完璧じゃなくても、
空気の変化にはとても正直だ。
だからこそ、あの朝の一言は、
僕にとって、目を覚ますような言葉だった。
⸻
次の朝。
僕はいつもより早く起きて、朝食を準備した。
娘の好きなヨーグルト、ママの好物のトースト。
でも、ママの表情は変わらなかった。
娘がまた言った。
「ママ、やっぱり えがおしてないね」
ママはそれを聞いて、ふっと笑った。
目元だけ、ほんの少しやわらかくなった。
僕はそれを見て、
ああ、やっぱりこの子の言葉には敵わないと思った。

【「家族」って、なんだろう】
“家族サービス”って言葉が嫌いだ。
“サービス”なんかじゃなくて、
家族は“空気”みたいにそばにいるものだと思ってた。
でも実際は──
そばにいるのに、心が離れていく瞬間がある。
それに気づくのは、いつも子どもなんだ。
⸻
娘がくれた言葉は、ただのセリフじゃない。
僕たちに必要なものを、まっすぐ届けてくれる“鏡”だった。
「ママ、笑ってないね」
その一言がなかったら、
たぶん僕は、これからも見て見ぬふりをしていたかもしれない。
この家族を、もう一度ちゃんと繋ぎ直すのは、
“育児の正解”じゃなくて、
“ほんの小さな優しさ”なのかもしれない。
笑わせようとするんじゃなくて、
一緒に笑えるように。
今日からまた、やり直してみようと思う。
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