「もぐもぐって、かわいいね」
娘が赤ちゃんだった頃、よくそんなふうに笑っていた。
ばなな、にんじん、すいか……
ページをめくるたびに出てくるカラフルな食べものたちに、目をまんまるくして喜んでいた姿を、今でもはっきりと覚えている。
この絵本は、そんな“食べること”がまだ「遊び」であり、「冒険」だった頃の記憶を思い出させてくれる。
当時、娘にとって食事は“義務”ではなく、“楽しみ”であり、“まねっこ”だった。
言葉よりも先に、「ぱっくん」「もぐもぐ」の音に反応し、
自分の口を動かしてみせる──。
そんな無垢な姿を見て、僕たち親の方が笑顔になっていた気がする。

【絵本の魅力①:赤ちゃんが思わず見つめる“色と形”】
この絵本のいちばんの特徴は、そのビジュアルにある。
Sassyらしい、黒・白・赤の強いコントラストに加え、左右対称の顔や、ポップでくっきりとした模様。
これらのデザインは、すべて赤ちゃんの発達心理に基づいて作られているという。
娘も、いくつか絵本が並ぶ中で、なぜかこの本だけは“じーっ”と見つめていた。
視覚的にしっかり刺激があるのだろう。
指をさして、笑って、なにかを伝えようとしてくる。
そういう反応が返ってくると、
「この絵本は、“届いてる”んだな」と、親として実感できる。
【絵本の魅力②:“音”で楽しむ食育の第一歩】
この絵本は、「読む」というよりも「音で楽しむ」感覚が強い。
「ぱっくん」「もーぐもぐ」「かぷっ」「がぶっ」──
擬音語やくり返し、伸ばし音がたっぷり登場する。
特に赤ちゃんは、まだ言葉の意味はわからなくても、音のリズムや響きにとても敏感。
娘もこの本を読むときは、まだ話せない時期でも一緒に口を動かして「んー、まっ、もー」と反応していた。
最初はただの反射かと思ったけど、
何度も読んでいくうちに、「ぱっくん」と言うと口を開けるようになっていった。
まるで絵本と一緒に“食べる練習”をしていたみたいだった。
それが、「食育」という言葉の意味を、実体験として感じた瞬間でもある。
【絵本の魅力③:読みながら育む“生活リズム”】
この絵本は「食べる」をテーマにしたストーリーになっている。
赤ちゃんにとって、“生活リズム”を覚えることは大切な成長の一部。
そして、絵本はその導入にぴったりのツールになる。
娘にとって「いただきます」はこの本から覚えた言葉だった。
「いただきまーす!」のページで、絵にあわせて僕が手を合わせると、
娘も真似して、ぺたんと手を合わせてくれた。
毎回そうやって読んでいるうちに、食卓の前でも自然と手を合わせるようになった。
いま思えば、絵本と暮らしがつながっていた。
「読む」と「生きる」が、まだ完全に分かれていない赤ちゃん時代だからこそ、
こうした絵本の力はすごいんだと思う。
【まとめ:赤ちゃんだったあの頃、確かにあった絆】
何度も読んで、角がすれてボロボロになったこの絵本。
でも、その一枚一枚に、娘の「初めて」が詰まっている。
初めて笑った食べもの。
初めて声を出した擬音語。
初めて口を動かした「もぐもぐ」。
成長とともに絵本の内容を忘れていっても、
そのとき確かに交わした笑顔やスキンシップは、
親の心の中にちゃんと残っている。
今ではすっかり“自分で食べる”ようになった娘。
毎日「もう〜! こぼさないで〜!」とバタバタしてるけど、
たまにこの本を手に取ると、不思議と心が落ち着く。
棚にこの絵本を残している理由。
それはきっと──
「もぐもぐ」が、僕たちの親子としての“はじまり”だったから。
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📚 作品情報
『Sassyのあかちゃんえほん もぐもぐ』
作・絵:La ZOO
出版社:KADOKAWA
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