2025年5月某日、朝。
「パパ、いってらっしゃい!」
玄関で手を振る娘の声が、今日はなぜか遠く感じた。
いつもと同じ朝のはずだった。
慌ただしく支度をして、スーツに袖を通し、タイムカードに間に合うよう家を出る。
でもその日は、娘の声がまるでガラス越しに聞こえてくるようで、妙に心に引っかかった。
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駅までの道を歩きながら、ふと考えてしまった。
この仕事に、未来はあるんだろうか。
俺がここにいる意味って、誰かにちゃんと届いているんだろうか。
職場では、努力しても報われないことが多い。
いい人でいようとするたびに、便利な存在になっていく。
「言いやすい相手」になって、責任やミスの後始末ばかりが回ってくる。
疲れてないわけがなかった。
でも、家では笑っていたい。
少なくとも、娘の前では“ちゃんとした大人”でいたい。
そんなふうに気持ちを切り替えてきたけど──
今朝は、なぜかうまくいかなかった。

会社ではいつも通りの一日が流れていった。
同じデスク、同じ空気。
たまにスマホで娘の写真を見ながら、自分を保つ。
「がんばる理由は、ある」
そう自分に言い聞かせながら、時刻だけが過ぎていく。
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夜、帰宅したときには、娘はすでに眠っていた。
小さな寝息が部屋に広がる中、ふとリビングのテーブルに目をやると、一枚の紙が置いてあった。
娘が描いた絵だった。
クレヨンで描かれたパパの顔は、大きく笑っていて、その隣には「パパだいすき」の文字が並んでいた。
思わず、何かが崩れそうになった。
「いってらっしゃい!」
朝のあの言葉が、もう一度、頭の中で響く。
きっと娘は、いつも通りの気持ちで手を振ってくれたんだろう。
でも、俺の心が勝手に鈍くなって、遠く感じてしまっていただけだったんだ。

仕事をして、生活を守って。
そうやって生きていくのが“父親”だと思っていた。
でも、気づかないうちに、自分の心がどこかに置き去りになっていたのかもしれない。
どんなにしんどくても、あの朝の「いってらっしゃい」があるから、俺はまた歩いていける。
今日の一歩が、明日につながると信じて。
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会社では自分の価値が見えなくなる日もある。
だけど、娘の描く「笑ったパパ」が、きっと本当の俺なんだと思う。
あの小さな手が、俺を父親にしてくれている。
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今日も、ここに綴っておきます。
「娘の声が、遠く感じた朝」のことを。
そして、きっとまた“近く”で聞こえるようになる未来を信じて。
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